読後感

組織の罠:クリス・アージリス[Chris Argyris]:河野昭三(訳者)

タイトル:組織の罠
初版:2016年3月30日 
発行:毎日新聞出版社
著者:クリス・アージリス[Chris Argyris]
訳者:河野昭三[こうのしょうぞう]

 本書は組織行動論の大家クリス・アージリス渾身の遺作である。彼の半世紀にわたる研究成果の集大成と今後の研究の出発点が示される。人間は誰であれ、理想を標榜しつつも脅威に直面すると平然と自己防衛の振舞いを見せる。従来の組織研究ではこのことが無視されていると批判し、防衛的思考から建設的思考へ転換させる組織学習の在り方が説かれる。組織マネジメントの研究者や実務家すべての共有財産とすべき貴重な必読書。

本著の帯より

 ちょっと難しい。読むのに結構な時間がかかった。そして時間がかかった割に、ほとんど理解できていないと思われる。

 少しでも専門的な教育を受けた方ならそうでないのかも知れないけど、まったくの素人(理系的)にはちょっと難しかった。

 そう言うことも踏まえた上で、以下、読後感。

 組織が陥りがちな(ほとんどの組織に当てはまる)、改革や改善あるいは問題の打開などについて議論した場合、自己防衛のために自己を正当化(そもそもの改革・改善の必要が出たことは自分のせいではないと)したり、問題の本質から議題をずらしたりする。

 さらにはその事について、議論すら不可とする様に振る舞い(無かったかの様な振る舞い)、自らは犠牲者(被害者)であるかの様に振る舞ってしまう状態に陥ってしまう。

 特に、日本においては明け透けにものを言うのは憚られる傾向がある。

 確かに、日本には「口は災いの元」や「雉も鳴かずば撃たれまい」と言う諺もあるし、少し意味合いは違うが「以心伝心」や「言わぬが花」などの言葉からもわかる様に、相手を慮るために正直にものを言わない傾向が強いと思われる。

彼らは「他人に対し率直に明け透けにものを言うことは、組織内では自殺行為となる」

本文第13頁より

「君の事実発見は恐らく正しいが、それを公然と議論するのは賢いやり方ではない。何よりも慎重さが大切だ」

訳者の後書より

 私も若い頃は「そう言うことは思ってても言わないほうがいいよ。」みたいなご助言を多くの先輩方から受けた記憶が多々ある。もちろん、その先輩方は私のためを思って言ってくれているので、人としては良い方々(優しい方々)です。

 当時は「正しいことを正しいと言って何が悪い?」と反発したものです。そして残念ながら今では、その先輩方がおっしゃられていた言葉の意味も(正しいとは今でも思いませんが)理解できる様になった。

 友達関係とか一時的な表面上の付き合いならいいが、組織において「会議は踊れどされど決まらず」や「問題が発生し解決しようにも有耶無耶にされる。」と言う様な状況は避けるべきなので、やはり理解はできてもそれを是とするわけにはいかない。

 ただ、一般的なサラリーマンにおいて、自らの安穏とした地位を脅かす様なことはしたくなく、厄介なことや自分に不利なこと(脅威的なこと)に直面すると防衛本能が働くのは当然だと思う。著書内では「モデル I の実用理論:防衛的思考」と表現されている。残念ながら、私自身そうであることを反省した次第。

一方的に統制せよ(Be in unilateral control)。
勝て負けるな(Win and do not lose.)。
弱気は見せるな(Suppress negative feelings.)。
合理的に振舞え(Behave rationally.)。

本文第60頁:モデル I の実用理論:防衛的思考より

 特に、「合理的に振る舞え」は、見かけ上は合理的で筋が通ってそうだが、その結末は議論を避けたり、自己防衛のための言い訳だったりする。

 これとは反対に、人々の多くが、価値やスキルの良さを信奉し認めている「モデルIIの実用理論:建設的思考」が対比として挙げられている。ただし標榜はするものの、実践されていない。また、自らの行動がそれと乖離していたとしても気が付かないと言うもの。

根拠の確かな(検証可能な)情報を求めよ
  (Seek valid (testable) in-foromation.)。
十分な情報のもとで選択せよ
 (Create informed choice.)。
誤りを発見し修正するよう常に監視せよ
 (Monitor vigilantly to detect and correct error.).

本文第62頁:モデル I の実用理論:防衛的思考より

 上記の様に、常に行動できるように組織の意識やシステムはあるべきである。しかし、どの様な組織でも難しいところである。

 また、本著内でのさらなるキーワードの一つとして、「ダブルループ学習」がある。

 この「ダブルループ学習」がまたこの一冊を読んだくらいでは理解できないほど難しい。

 単純にPDCAを回すだけでなく、PDCA以前の前提(定義・考え方・立ち位置)も、PDCAを回す中においてその前提に間違いがないかの修正を入れて、もう一つのループ(PDCAとは別のループとして前提の見直しと言うループ)を付け加えて回せ。と言う理解でいいのか?

 他にも、標榜(建前)と実際(本音)の乖離を埋めるための、外部の意見を取り入れる方法などもある。

 いずれにせよ、言っていることは至極真っ当で耳が痛いことが多い、そして多くの人は言い訳として、植木等よろしくの「わかっちゃいるけどやめられない。」って状態なんですよね。本著的にはこの言い訳がすでに、モデル I の実用理論:防衛的思考なんですよね。


組織の罠

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