読後感

タネの未来(僕が15歳でタネの会社を起業したわけ):小林宙

タイトル:タネの未来
初版:2019年9月20日
発行:(社)家の光協会
著者:小林宙[こばやしそら]

 

 高校生が書いた本と言うことで、「若い子が頑張っているんだね。」的な見方をしてしまうかもしれない。しかし、感想としては、年齢は関係なく一つの作品(書籍)として読んだ方が面白い。なので、副題について、商売として消費者の興味を引く(販売数を増やさないといけない)ために必要と言う点は理解しつつ、個人的な感想としては(副題は)不要だと感じた。副題(15歳で起業)のインパクトに引っ張られて、高校生のサクセスストーリー的な読み物かと勘違いしてしまう。もちろん、読み進めればすぐにそうではない事に気がつくが。

 内容は、純粋に地域に残る伝統野菜を残して行きたいと願う青年の思いと、なぜその考えに至ったのか、なぜ残していく必要があるのか、そして伝統野菜が消えていっている事実とそれらを残すための障壁がなんであるか、問題点はどこにあるのかなどが色々な角度から問題提起がなされている本である。

 主題からは少し外れるが、自分自身の事業について、目的をはっきりとさせ、その過程をシミュレートしたり、問題点があれば解決方法を様々な方面から模索する思考などもしっかりとしている。「営業マンをさせたらトップセールスになれるだろうなぁ。」とも感じた。本文の中にそう思わせることが多々あるが、例えば、販売用のタネ袋を考える際に、アブラナ科のタネはポリ袋に入れると静電気で取り出しにくく「こういうデメリットは、商品にとっては地味に大きい。」と言う内容の記載があったり、タイと日本の郵便制度のちょっとした違いで日本で郵送によるタネの交換会があまり多くない理由についても「利用者が爆発的にふえるのか、まったく増えないかどうかの違いは、本当に些細なハードルだったりするのだ。」と小さな問題点も見逃さず、そこから解決方法を模索していく。こう言うところに関心させられた次第。

 純粋にタネ(植物)の話としては、F1種、固定種、GM品種などの単語を聞いたことがない、あるいは聞いたことはあるがよく分からないと言う方の方が色んな発見があって面白いと思う。本文中にもあったけれど、植物からタネが採れるのが当たり前と思っている方も多い(と言うか、大半はそう)でしょうし。

 あとは、主題の通り、タネをめぐるさまざまな問題提起もされている。しかしながら、一方に偏ることなく、俯瞰的に見てメリット・デメリットを天秤にかけている内容であり、著者の考えは少し垣間見える程度。これに関しては当然なのかもしれない。「とにかく組み替え遺伝子食品反対!」とか「ノウヤクガーーー」とか言っている人たちの共通点は「知識がない(知らない事に対する漠然とした恐怖)」と言うことで、著者の様に様々な角度から知識を吸収して物事を考えれば、なぜそれらがあるのか、なぜそれらが発展してきたのかがわかるので、一方的に「反対」「賛成」なんて言えないだろう。


  一つだけ違和感。

 表紙にタネの写真があるけれど、本文は日本の伝統野菜についてが主に語られている。なのに、一番大きく、目立つところに写っているタネは「トウシキミ(=大茴香・八角・スターアニス)」。日本でも少しは栽培されているみたいだけれど、日本の伝統野菜じゃないし、原産国も中国(あるいはベトナム)なので、ちょっとズルい?(笑)。見た目的に綺麗なので、変わり映えしないタネの写真にスパイスとして入れたかったのも分かるけど・・・。

 

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。