読後感

日没:桐野夏生

タイトル:日没
初版:2020年9月29
発行:株式会社岩波書店
著者:桐野夏生[きりのなつお]

 自分で購入する本を選択すると、同じ様な分野の著書に食指が動く。バランスを取るためにも、毎月送られてくるVISAの会報誌に紹介されている本も参考にして購入している。先月送られてきた号の紙面で紹介されていたのが本作。

読後感

 舞台は日本の現代なので、ありそうな感を醸し出した「世にも奇妙な物語」系。普通に小説としては読み応えがある。これ系の小説を読むのはおそらく初めて。絶対に自分では選択しないジャンル。

 あらすじとしては、読者が良しとしない小説を書くと言う理由で、劣悪な状況で軟禁される主人公。他にも政府の意向に沿わない(反政府的)であるなどの理由で同様に収容される作家たち。施設の人間の言う「厚生」を果たせば開放さえると言うが、言論の自由や人権が当然にして認められる現代において、この様な軟禁自体の正当性を認めることは許されず、抗う主人公の結末は・・・(以下、小説の内容の通り)。

 内容は、現代を舞台にした恐怖小説(になるのか?)なので、読んでいる途中も読了後も爽快感は全くない。しかし、恐怖小説らしい、えも言われぬ感は休むことなくなだれ込んでくる。

 余計な形容などがないが、それでいて鮮明に情景が浮かんでくる端的な文章は恐怖感と気持ち悪さを増幅させる。主人公の心理描写や登場人物の台詞や状況描写なども見事なまでに「嫌な気持ち」にさせてくれる。飽きさせること知らずで、一気に読み終えさせられてしまう。

<以下、作品内容に触れる(いわゆるネタバレあり)>

 全4章中の第2章まで読んだ時点で「こりゃ、大団円はないな。」と感じたが、やはり最悪の結末に。特に、第4章は結末まで希望と絶望の繰り返し。超加速的な展開に目が離せない。

 最後は、全体を通した題目あるいは恐怖小説に相応しく、最期の姿の尊厳、死への方法の選択すら奪う徹底ぶり。先に「爽快感は全くない。」と書いたが、その徹底ぶりは「爽快」・・・か?と思ったが、「壮絶」とした方がしっくりくる。

以下、本作品の読後感とは関係ない。

 読了後、よもやと思い、本作の評価などを検索してみた。やはりと言うか、予想通りと言うか、現実と小説の区別がつかない人たちにより、「アベガー!」「政権・政府がー!」「これは今の日本だ!」「現代社会への警鐘だ!」などの感想や書評が書き立られていた。

 「日本がこうならないためにも(キリッ)!」的なコメントが見受けられた。

 作者にそう言う意図があって書いたのかどうかは知らないし興味もない。が、作品(小説)と現実の区別がつかなくなり、作品を作品として捕[とら]まえられない独善的な人たちが起こす恐怖を描いた小説の感想で「それ系(自分たちこそが社会正義であり正しい系)のコメントや感想」には激しく違和感を感じた。

 まさに上記の様な作品(小説)と現実の区別をつけることがなった人たちが言論統制に走るのだろうと再確認した次第。

 とは言え確かに、私個人的には上記の方々の懸念と同様に、韓国政府および韓国人が日本人へのヘイトスピーチ・ヘイトスクラムを垂れ流している現代社会において、日本人が抵抗・反論すれば「ヘイトスピーチだ!」と称して言論の自由に制限をかけ、対応する力を奪う社会風潮に恐怖を感じています。

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