読後感

理系の[採用・活かし方]トリセツ/杉浦大介

タイトル:理系の[採用・活かし方]トリセツ
初版:2021年4月13日
発行:株式会社ぱる出版
著者:杉浦大介[すぎうらだいすけ]

「理系人材を採用しない会社は、今後成長しないどころか淘汰される」。
経産省の試算では、日本はあと10年もかからずに理系人材が約45万人も足らなくなる、という。
そんなときに「売上を急拡大させなければならない」「売上3倍を目標にする」にはどうするか。
固定費が増加することなく売上だけが増え、利益を拡大させるには…それを叶えてくれるのが「理系人材」。
効率を最大化させる、IT自立ができる、価格競争に負けない、リモート時代に即したサービス提供等、重要キーポイントに欠かせない存在である。
今まで理系採用を考えたことのない経営者、どうやって採用すればいいか分からない人事担当者に向けた本。

株式会社ぱる出版の書籍紹介より抜粋

 人事担当者に向けた本を購買担当者が読んでみた。

 本文中の最後に書かれているが、理系と言っても色々とあるので、十把一絡げにされることはあまり好きではないのが理系。それでもその毛色は、明らかにその他系(文系や薬系、体育会系)とは一線を画すのが理系だと思う。

 なお、明記はされていないが、本著で言うところの理系は「国立大クラスの優秀な理系」であり、単純に「理数系大学の学生」であると言う意味ではなさそうだ。

 しかし、営業、学術、企画、購買と各部署を経験してきた私(採用担当ではない)の最初の感想は「文系の管理職」に是非読んで欲しいである。私自身、かつては、文系上長の理解し難い非論理的な言動には辟易していた。文系の管理職が悪いわけでない。彼らは彼らで理系の部下は使いにくいと思っているだろう。理系には「とにかくやれ!」とか「がんばれ!」の精神論が全く通用しないのだから。(そういう私は「理系の管理職」なので、文系の方々からは理屈っぽいとか、空気が読めないとか思われているかも知れないけれど。)

 あとは普通に、「理系あるある」的なところは面白い。対比として、文系(薬系、体育会系含む)の行動・思考パターンなんかも「そうそう、いてるいてる、こんな文系。」みたいに同調できるところも多々ある。あくまで著者から見た理系・文系の経験則からの評価であり、何か正式に調査や統計を取ったわけでないが、ネタとして面白い。なお、著者はどちらがいいとかではなく、理・文系が交わることで、生み出せる相乗効果をメリットとして推奨している。

 そして、本文内では、理系人材のことを「テクダン」「テクジョ」として表現している(流行らせたい?)。が、個人的感想としては、言い難いし「定着しないだろうなぁ。」予言してみる。

部分的感想

実は著者自身、もともと大学までは?ド文系の人間でした。そんな私が言うのですから、違いありません。文系だけの感性や思考で、会社を回していくのはキケンです。

P28

 「標本数(n)=1」(=著者のみ)のデータを持ち出して「間違いありません」と言われても・・・。もちろん、著者は他にも文系だけの感性で会社を回して危険な状態に陥った会社をたくさんみてきたからこそ言えるセリフ(本文)だと思うけれど、やはり突っ込まざるを得ない。

エンジニアの皆さんは、「筋を通す」ことを大事に考え、論理的に正しいかどうかを基準として話をすることが常でした。ある仕事をお願いしたときも、「気持ちとしてはやりたくないけど、ロジックとしてはごもっともだから、やるよ」と言って、決して手を抜くことなく責任を持って仕事を完遂してくれました。

P98

 これは多くの理系人には理解しやすいし、当然だと考える人が多いと思う。ロジックとして正しいかどうか。それが客観的に物事を見て分析することを基礎としてきた「理系の矜持」ではないだろうか。

理系の採用実績がない文系会社は、いきなり研究室に出向くわけにもいかず、ルートがなかなかありません。だからこそ、まずは実績づくりから始める必要があります。まずは1人、なんとしても理系人材を採用しましょう。それが実現したら、その人のこれまでの研究室や教授を紹介してもらい、緊密な関係を築いていきます。

P112

 「まずは1人」が一番難しいのであって、コネクションがあればそこをたどる方法は誰でも思いつく。だからこそ、そこ(まずは1人)について、何かしらの提案があって欲しかった。

「技術サービス職」というものが、一見すると専門性の低い職種というイメージがあったり、そもそも企業の名前から理系が活躍しづらいととらえられているところが真因であると考え、私は職種の呼称に「モビリティドクター」という造語を作り、募集をかけ直しました。
「車のお医者さん」という訴求要素を重視して「モビリティドクター」という言葉を作り、学生にできるだけ仕事の魅力が伝わるよう工夫したわけです。その結果、応募の数は大きく跳ねることになりました。

P140

 これは人事採用に限らず、自社の商品の魅力を伝えたりするマーケティングにも応用できそうだ。本著の後半でも採用活動と営業は同じみたいなことが書かれている。自社の売り込みをするのが採用担当者で、自社の製品を売り込むのが営業担当。

 一方で、特に外資系企業などは、レベルの高い理系人材には、年齢に関係なく1000万円レベルの報酬を普通に払います。テクダン・テクジョたちも、自分が出している価値への対価を払ってくれる会社に魅力を感じるのです。それは、正当な評価を欲しているからであり、それに応えてくれる報酬体系だと理解しているわけです。

P76

 そして中小企業の場合、収益が上がればそのぶん社員に還元する成果報酬型の給与体系への返還さ、トップダウンで即座に実現できる柔軟さがあります。

P84

たとえば3000万円の売価である製品をつくるためにかかった外部購入費を差し引き、売上総利益(粗利)を出します。粗利金額が1500万円…といったときに、目標値として「半期で粗利1億円」と設定し、越えた分はすべて賞与にする…というインセンティブを仮に設ければ、社員のモチベーションはきっと跳ね上がるでしょう。

P190

 P76、P84、P190の3箇所の引用。これはかなり大きな別の壁が存在していて、なかなかできないんでしょうね。既存勢力(既得権益者)の抵抗がすごいと思う。特に労働組合があったら、とてもじゃないが数年以上かかる。本著でも出てきたパレートの法則(上位2割:中位6割:下位2割)のうち、下位2割は上位2割の叩き出した利益を掠め取ることしか考えてない。著者の言葉を借りるなら、「もともとは労働組合の書記長の人間でした。そんな人間が言うのだから間違いない。」です。

「前向きに検討する」「対応を協議する」「速やかに対処する」…などの言葉を聞いたことがあると思います。「お役所言葉」とも言われ、行動の伴わない中身のない宣言に終始してしまうことが多々あります。

P192

 ほんと、文系言葉の代表格なので、備忘録として書き出し。理系は5W2Hで物事を伝え考えるのが好きなように感じる。文系同士ではビジネスで、「あ・うん」的な会話が成り立つシーンがあり、それはそれですごいと思う。


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