読後感

広告がなくなる日:広告は、行動へ。広告クリエイティブの可能性を追求したSNS /SDGs時代のブランド論/牧野圭太

タイトル:広告がなくなる日
初版:2021年4月1日
発行:株式会社クロスメディア・パブリッシング
著者:牧野圭太[まきのけいた]

著書の主題とは関係ないが、最初に

2020年11月に、ナイキジャパンがSNS等で公開したあるブランドムービーが話題を呼びました。日本に存在している「人種差別やいじめを明確に描いた」この映像は、多くの人からの称賛を呼びつつも、一部からの「強い批判」がありました。しかし、その集まった「批判」こそが差別の存在をより明確にしています。(ぜひSNSの投稿を見てください)

p222

 何故、批判が集まったのか。それに言及せず、この問題をこの様に抜粋すると、日本人がことさらに差別を行っているかの様にも捉えられてしまう。日本に差別がないとは言わない。が、差別を「謂れなき不当な扱いや偏見」と定義するなら、韓国と言う国と国民に向けらえれる視線は差別ではなく区別である。こう言う、日本人だけが一方的に悪いみたいに書かれたら気分が悪い。言うまでもなく、差別は認められるものではないとした上での話し。

 結局、ナイキの「ダイバーシティ・ウォッシュ」に踊らされて、ナイキだけの一人勝ちの様な気もするけれど。

閑話休題(本題)

 冒頭、「現在(2021年3月)、新型コロナウイルスの影響もあり、多くの街の本屋さんも大変な局面にあると想像します。しかし、この本が発売される頃には「緊急事態宣言」もあけ、春を迎え、街にも少しずつ活気が戻ってきているはずです。」との記載がある。
 この本が私の手元に届いた4月13日現在、悪化の一途をたどり、すでに第4波となることが確実視される状況になっている。なかなか、先が読めない状況です。この様な状況だからこそ、広告のあり方も変化してきているのだとも思うけれど。

 あと、この本の特徴として、本を90度回転させて読むスタイルになっている(「見開き上下」と表現したらいいのか?)。
 著者はその理由について、「常識を疑ってみる、あるいは天邪鬼な性格」と語っている。読み手の視点としては、本を持ちにくいし、読み難い。
 もちろん、常識を疑ってみるのも天邪鬼なことは、嫌いではない。
 しかし、長い年月をかけて集約してきた形態と言うのは、それだけで美しい形態である。例えば漢字(平仮名、片仮名)やラテン文字、アラビア文字などの多くの言語の文字の形、茶道の作法などである。それを覆すのであれば、天邪鬼や常識を疑うだけでなく、それなりの根拠は欲しかったところ。単に積み上げられた歴史や叡智を否定するだけなら誰にでもできる。

 この本の形態でのいい点を挙げると、この本自体がプレゼンの様な形式で、上部に図や写真、見出し的な要約が掲載され、下部に文章がくる様になっている。そして、その上下で一つの単元が完結する。そのため、図や写真などは横長の方が見やすい。このプレゼン式のこのスタイルとは相性はいいことは確か。慣れるとそれほど持ちにくさも、それほど気にならなくなる。
 見開き上下の上の部分に表示されている図表は要点が抜粋されている。参考になるページはコピーして机の周りに貼っておきたいくらいである。そう言う意味では見開き上下のメリットもある。

 さて、本文としては、ちょっと左寄りな思想がありそうな著者である。一部のそう言うところを除けば、広告のあり方に対して警鐘を鳴らし、これからの広告のあり方の提言は興味深い。上記の通り、「コピーして貼っておきたい」と思うところもある。

 この本の内容を総括的、かつ最も端的に表している一言が「最初から話題になるクルマ」だと感じた(著者の意図するところとは違うかもしれないが)。
 出来上がったもの(プロダクト)に、後付けでキャッチーコピーや宣伝を行い、よりよく見える様にするのではなく、商品企画の段階から、エシカル、SDGsなどの時代に共鳴できるプロモーション(広告)を視野に入れて、製品開発を行って行くこと。そうすることが、旧来の不要とされ忌み嫌われる(笑)広告がなくなり、新たな広告のスタイルが確立されていくのだと言う提言に思えた。

誤字?(多分、誤用だと思うけれど)

よく聞かれる質問の一つに「どうすれば、アイデアを生み出せるようになりますか」といったものがあります。
僕なりの返答を書いてみます。アイデアを生み出す人はまず「天邪鬼(あまのじゃく)」である必要があります。それはいつだって、「当たり前」を疑い、逸脱する行為だからです。世の中を「うがった」見方をする必要があります。

P96

 文脈的に「うたがった」だと思う。
 実際、「うがった(穿った)」を「うたがった(疑った)」と言う意味で使う人も結構いてるし、おそらく著者も誤用しているのだと思う。ただ、本著は文学作品でも何でもないので、これくらいの誤用は許容範囲だが。

調べた言葉

  • VUCA(ブーカ)
    Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字から取った言葉。
    環境(経営環境や個人の環境など)が目まぐるしく変化し、予測できない状態を示す。
  • UGC(User Generated Content)
    企業ではなく一般生活者が作成(発信)したコンテンツを指す。
    食べログやAmazonのレビューや個人ブログやSNS上での評判など。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です